マッチ・スティック・メン ★★★★☆

Ura2004-07-29


昨日、というか今朝眠れなかったので、借りてきていた「マッチ・スティック・メン」を観た。
観たかったのは、リドリー・スコットの作るコメディがどんなものかということ。
ところが実際に観て見ると、コメディ的要素はあまりなかったように思う。そもそもなぜ、この映画をコメディだと思い込んでいたのかもわれながら不明。

内容としては、異様に潔癖症神経症的な詐欺師ロイのところに突然14歳の娘が転がりこんでくるというもの。
この娘は14年前に出て行った前妻が当時妊娠していた子で、ロイはその後妻とも娘とも全くコンタクトを取っていなかったが、薬を貰うために通いはじめた精神科医の勧めで連絡を取ってみると、娘が会いたいと言ってきた。
一見したところは、これまで誰に対しても心を開かなかった詐欺師が娘に出会った事でだんだんと心を開いていくという心温まる話なのだが、映画が後半に差し掛かると、どんどん犯罪劇っぽいトーンになっていき、ついには娘が詐欺を手伝い始めたり、挙句の果てには騙されたことを恨んでゆすりに来た男を、娘が銃で撃ってしまったりする。
突然ドタバタしはじめたなあ、などとのんきに思っていたら、最後に驚かされてしまって、参りましたという感じだ。

物語の構成を別にすると、見せ場はなんと言ってもニコラス・ケイジ神経症的に家中を掃除して回ったり、娘に答えにくい質問をされるたびに「Ah—ah—ah--」と、嘘をつくこともはぐらかすことも出来ずに居るところなど。稀代の詐欺師も娘にかかってはひとたまりもないのだ。
軽い気持ちで見て楽しめる佳作・・・といえるかなあ。
リドリー・スコットはやっぱりお金をたっぷり遣った大作のほうが巧いと思うんだけど。


ところで、この映画が公開される直前にスパイク・ジョーンズの「アダプテーション」を見たのだが、この映画中のケイジは、ちょっと引いてしまうほどでっぷりと太っていて、見るからにルーザーという感じだったのだが、「マッチ〜」では無事本来の彼の姿になっている。
こういうのを見るにつけ、役者っていうのは大変だなあと思ってしまうが、まあ、それはそれ。映画の出来とは殆ど関係ない。

因みに、「コンフェッション」でわたしの期待を見事に打ち砕いてくれたサム・ロックウェルは、この映画ではかなり良い味を出しており、軽薄だが頭の回転が速くて憎めない、ロイのパートナーの詐欺師役を好演している。
これからも目を離さないでいようかな。