アメリカン・スプレンダー ★★★☆☆

Ura2004-07-28


映画の日なので、「アメリカン・スプレンダー」を観て来た。

これは病院で書類整理をして生計を立てていた男が、ある日ひょんなことからだいすきなコミックの脚本を書き始めるという話で、そのコミックの内容はなんと彼自身の生活について。
つまり、毎日毎日どこにも行き着かない仕事をしている冴えない男の冴えない毎日を描いたコミックなのだ。

そんなわけで、という訳でもなかろうが、全編異様にテンションの低い、笑いのテンションすら低い映画だった。
やりようによっては、もっと「ゴーストワールド」みたいな映画になるんじゃないかと思うのだが、もうひとつというところだ。
いかんせん、実際の「アメリカン・スプレンダー」作者を映画中に取り込むやり方が拙い。
現実ではすっかり年を取った現実のハーヴィー・ピーカンがしょっちゅうスクリーンに登場しては、その当時の思い出話をやったり、映画の撮影現場で登場人物と話し込んだりするのだ。
主人公のハーヴィー・ピーカンがレターマンの番組に出るところで、実際に放映された現実のハーヴィーが出ている映像を使うのはものすごく良かったが、そのほかの場面ではもっと何とか出来たのじゃないかと思う。

とにかく、基本的にものすごく、しかも最初から最後までずっと暗いのがやっぱりネックかな。主人公のハーヴィーもなんだかわからないが、いつも仏頂面をしているし。
暗いなら暗いなりに、もっと部分的な笑いやネタで閃光的に光らせたほうが、コントラストがはっきりしていいような気がした。
でもまあ、もしかしたらこれが現実の人生なのかもしれない。
ハリウッド的なクライマックスもカタルシスもないし、主人公が(そして現実のハーヴィーが)癌に打ち勝っても映画を撮ることになっても、人生はこれからもずっと続いて行き、この先何の保障も約束もないところなどが。