ハウルの動く城 ★★★★★

Ura2004-11-24



ハウルの動く城」を観て来た。
さぞや混んでいるのだろうと思って出掛けたのだが、予想に違わずすごい人出。
ただ映画館が巨大だったので、開演10分くらい前に入ったにも関わらず、座ることが出来た。ラッキー。


この映画の目玉はやっぱりハウルの声がキムタクということだろうと最初から思っていて、ハウルがどれだけキムタクなのかを見てやろうと意気込んでいた(大袈裟)のだが、全然キムタクじゃなかった。
というか、事前にそのことを知らなかったら、多分キムタクが出演していることにも気づかなかったろうと思われる。
映画中、ハウルが登場からしばらく、ずっとキムタクの声に耳と神経を集中していたのが、ものすっごく馬鹿みたいだった。なんだ、普通にいいじゃん、と思いつつ。

ところでキムタク以外については、宮崎映画ではやっぱり女の子が救世主なのだな、ということがいちばんの感想だ。
見かけは少女でも心の中は肝っ玉母さんという女の子像が今回もやっぱり幅をきかせている。しかも今回は、その少女は殆どずっと90歳の老婆として行動しているのだ。更にお母さんっぷりが強調されている。
一方の男の子、つまりハウルはというと、わたしの印象としては「千と千尋の神隠し」に出てくる「ハク」のように、悪に魅入られてしまった好奇心と野心たっぷりの美少年だった。
この子はつい一瞬、権力という「夢」に心をはせ、それを実際自分の手に入れるが、そのことによって心の平安を失ってしまい、始終脅えて暮らすことを余儀なくされる(そうは見えないにしても)。
でも逆に言うと多分、男の子というのは夢と好奇心のせいで悪魔と取引をしてしまうくらいがいいのだというような宮崎氏の気概のようなものが感じられるのも確か。
それになによりこのハウルは魅力的なのだ。その弱さもむちゃくちゃな奔放さも絶望も含めて。

正直なところ、物語自体は結構ありきたりだし、どこかで見たような紋切り型の展開が幾つも見られる。
しかし、この映画を面白くしているのは物語それ自体というよりも細部なので、どう見ても美輪明宏にしか見えない荒地の魔女や、金髪に染めていた髪の毛が黒くなってしまい絶望に陥り、突然スライム化してしまうハウルや、悪魔のくせにソフィ(主人公の女の子)の口車に簡単に乗せられて騙される炎の悪魔カルシファーを見ているだけで、ついつい噴出してしまいたくなる。
個人的には、国王に呼び出された荒地の魔女が、城の恐ろしく長い階段を上るたびにどんどん汗だくになり、魔法で変身していた姿がどんどん崩れていき、終いには自分で呪いをかけた相手であるソフィに対して助けを求めるところなど、爆笑ものだった。
その場面では因みに一方のソフィも「がんばりなさいよ、あんた」などと言って、呪いをかけられた恨みなどすっかり忘れている様子なのがまた笑えた。
こういう小さな笑いが随所に詰まっていて、ほんとうに良い映画だったと思う。
ただ、やっぱり、宮崎駿オリジナルの物語じゃないというところで、やや枠組みは平凡かなあという感が残るのは否めないな。