ピエロの赤い鼻  ★★★★☆

Ura2004-12-28



小学校教師をする傍ら、ピエロとして村人たちを楽しませるプゼはみんなの人気者だったが、彼の息子だけは自分の父親が道化をしているのが嫌でたまらなかった。
プゼが舞台で演じている時も息子だけは仏頂面をしているのを見咎めたプゼの友人アンドレは、彼を外に連れ出し、なぜプゼがピエロになったのかという話を始める。
それは戦時下、アンドレとプゼらがドイツ軍に捕まってしまった折のことだった。

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この映画を観ていると、すべてが詰まっていると思わせられる。
演技達者な役者、すばらしい原作、隅々まで目の行き届いた演出、そして物語の随所に見られる笑いと涙の感動的要素。
それなのに、それらが全部集まってしまうと、なんとなくすべてがあっさりしすぎている感があるのはなぜなのだろう。
ジャック・ヴィユレがピエロを演じているだけで笑えるし、そもそも彼は何もしてなくてもなんとなく可笑し味のある俳優なのだ。その彼がアンドレ・デュソリエ、そしてティエリ・レルミットと絡み、その上、プゼの教え子であったというブノワ・マジメルまで登場するのだ。
それだけではない、この四人が揃ってドイツ軍に捕らえられ、深い穴の中に放り込まれ、一晩を明かす羽目となるのだ。しかも数十時間後には同じように銃殺となる運命を待ちながら。
当然、彼らはお互いを責めたり、憤ったり、自分たちの運命を嘆いたりと、めまぐるしい感情の変化を見せてくれる。
これほど何もかもが揃った映画も珍しいではないか。
でも結局のところ、わたしがいちばん目を凝らして見ていたのは、ブノワ・マジメルの太い腕と胸筋なのだ。
「ピアニスト」の頃はこんなに太くなかったのに、いつこんなに筋肉をつけたんだろうと、馬鹿みたいにずっと考えていた。
しかも、四人の捕虜が穴に閉じ込められているという、物語のもっともクライマックスの場面で、だ。
一体なにが欠けているためなのだろうか。
それとも何かが欠けているのは、観ているわたしのほうなのだろうか。