ロスト・イン・ラ・マンチャ ★★★★★

Ura2005-01-15



監督 Keith Fulton、Louis Pepe




テリー・ギリアム監督、主演ジョニー・デップジャン・ロシュフォールの「ドン・キホーテ」といえば、誰もが観たいに決まっている。
しかし、この映画は「ドン・キホーテ」ではない。
ギリアム構想・監督の「ドン・キホーテ(The Man Who Killed Don Quixote)」撮影中の度重なる不運と災難を描いたメイキングなのだ。


ギリアムの構想する「ドン・キホーテ」の第一の問題は、彼の溢れ出るイメージの多さと幻想的なことで実現に相当な金額を要するということ。つまり、アメリカ資本が必要となる。
ところが彼は「バロン」で莫大な予算オーバーをしてしまい(それも口八丁手八丁ででたらめを言い飛ばしたプロデューサーのせいで!)「コントロールの効かない」映画監督という評判がついてしまい、スポンサーを見つけるのが困難になってしまった。
ついに彼はアメリカに見切りをつけ、ヨーロッパの資金のみで映画制作に踏み切ることになる。
しかし映画制作が決定し、ロケ地スペインに入ってからも、次々と問題が持ち上がり、ついに映画制作はストップしてしまう。


この映画を観ていると、ギリアムの天才的なひらめきに感嘆するばかりだが、一方でそれを具現化するスタッフに対する同情と尊敬を感じてしまう。それほどギリアムの創造力は底なしで、まるで溢れ出る泉のようなのだ。
ああ、これだからこそ、ああいう破天荒で素晴らしい映画を作れるんだなあと、単純に納得してしまった。
そもそもこの「ドン・キホーテ」はギリアムが10年来温めてきた作品なので、彼の頭の中ではすべてがクリアーなばかりか、キャストも面白いほど的を得た配役になっている。
大体、ジャン・ロシュフォールドン・キホーテをやるなんて、まさに夢の実現としか思えない。
彼が衣装合わせでちぐはぐなガラクタ鎧をまとったところなど、膝を打ちたくなるほどのはまりようだ。
この映画が構想のまま朽ち果てるのはファンとしても、なんとも残念である。
それにギリアムが映画の撮影中止を知らせる折の苦痛に満ちた寂しげな顔。
この天才映画監督が自分の夢を文字通り断念する様子を見ているだけでも、なんとか映画の実現が出来ないものかとつい願ってしまう。
エンディングでその後新たな出資者が出てきて、半年ぶりに撮影再開を知らせてくれたのは、ほんとうに嬉しいニュースだが、その後まだ撮影が終わったという話も聞かないし、ちょっと心配である。
なんとしてもこの壮大な映画を実現させて欲しいものだ。