ディボース・ショウ」★★★☆☆

ジョエル・コーエン監督、ジョージ・クルーニー、キャサリンジータ・ジョーンズ出演。

ジョージ・クルーニーとキャサリンジータ・ジョーンズの離婚訴訟をめぐる映画か、なるほど、などと思いながら観ていたら、なんとしょっぱなに出てきたのはジェフリー・ラッシュ演じるTVプロデューサー。
しかも家に戻った彼が妻の不倫現場を差し押さえ、突然修羅場が始まるのだ。そりゃ、面食らうというものだ。
しかも、不倫現場を押さえられ、妻の不倫相手を殺そうと銃を振り回したものの、相手に怪我ひとつ負わせるどころか、自分が妻に後頭部を殴られ、挙句の果てには自分が受賞したソープオペラ大賞(みたいなやつ)のトロフィーで尻に怪我を負わせられた彼が、結果的には身包みはがれ、体ひとつで追い出される羽目になってしまう。そう、それはつまり、ジョージ・クルーニー演じるマイルズの離婚訴訟弁護士としての腕自慢から始まるというわけだ。

マイルズは腕に自信があるばかりか、暇さえあれば歯医者にホワイトニングに出掛け、自慢の白い歯の確認にも余念がないという、嫌味なほどヤッピー的な弁護士だ。
しかし対するキャサリンの方も負けてはいない。いかにも腹黒そうに見える美貌を武器に、しかし必要とあらば訴訟中の裁判で涙を見せることも出来るという、骨の髄まで金の亡者。しかし、彼女が金の亡者とわかっていても、つい魅了されてしまうほどのその美しさ。
どう見ても好敵手としか思えないような二人だが、その実、離婚訴訟にかけては業界随一といわれるマイルズをキャサリン演じるマリリンは一枚も二枚も上回っている。
いちばん最初の離婚訴訟こそは、マリリンにびた一文やることなしにマイルズが負かしたが、次にマリリンが会いに来たとか思うと、ちゃかり石油成金を捕まえ、結婚したいと言う。それも相手の財産はこれっぽちも欲しくないと宣言したりするのだ。
彼女はマイルズと共にわたし達観客をもだまくらかすほど込み入った計画を容易に立て、しかも実行してしまうクレバーさに溢れている。タネが見えたときにはマイルズばかりか、観ているこちらまで唖然としてしまうほどだ。

しかし、二重三重にも仕掛けられた財産狙いの離婚計画ばかりがこの映画の目玉なのではない。
マイルズが働いている弁護士事務所のボスである老人は、体中にチューブをつけながらも仕事に精を出しているところなど、殆ど亡霊としか思えないし、最後の方に出て来る「ぜえぜえジョー」という名の殺し屋などは、フランケンシュタイン然とした殺し屋のくせに喘息用の吸引機を手放せないなど、見ているだけでおかしくてたまらない。この辺はもう、コーエン兄弟のユーモア感覚の賜物という感じであろう。

しかし、いかにも意地悪女全としたキャサリンジータ・ジョーンズがよくこういう役を引き受けたよなあ。
わたしなんて、そのことだけでも結構吃驚しちゃうほどである。でも、「シカゴ」の頃から考えると痩せて更に洗練された容姿を手に入れた彼女には、多分ジョージ・クルーニーじゃなくても簡単にだまされてしまうことだろう。イレジスタブルというのは、多分こういう女性の事を言うのじゃないか。
ジョージ・クルーニーのほうも、相変わらずチャーミングで、ディナーの席でスプーンに自分の歯を映して満足しているような所も、馬鹿みたいであることは間違いないが全然憎めない。

因みに最後は何もかもをうまくまとめましたというのがあまりにも見え見えで、別にそこまでやらなくてもいいのでは?という思いが払拭出来ない。
でもまあ、どうせハッピーエンディングにするなら、ここまでやってもいいのかも、という気も、正直言えばしないでもないのだ。