金曜の夜、友人が出張で仙台にやって来た。
仙台に来るのは初めてじゃないにしても相当久しぶりなことに間違いはないだろうからということで、夕食は牛タンとあらかじめ決めていた。
この夜食べに行くことにしていた店は因みに、国分町という飲み屋街にある小さな店で、牛タンのほかに名古屋名物の味噌カツも出しているという一風変わったところだ。
味噌カツは本場のものを食べたことがないのでなんとも言えないが、牛タンに関してはまったく侮れない。利休という激うま牛タンチェーンにもまったく引けをとらないどころか、がっぷり組めるほどの味なのだ。
そして、なによりこの店のいちばんの特徴はというと、店の場所がいまいちわかりづらいことだ。
表に大きな看板が出ていないのは言うまでも無く、二階だか三階にある店なので、結局向かう途中で迷ってしまい、電話で詳しい場所を聞く羽目になってしまった。でもはっきり言って、それだけの甲斐はあったと言える。牛タンは肉厚で美味かったし、味噌カツも大きいのに不思議にしつこくない味付けで美味しかった。
しかも、店中の壁にぐるりと芸能人のサインが貼られているにも関わらず、お店をふたりだけできりもりする夫婦(と思われる)の対応がおっそろしく優しい。
大体、自分達用にと買っておいたトマトをつまみに出してくれるほどなのだ。あとは推して然るべし。

牛タンを食べて満足したあとは、飲み屋街をちょっと外れたところにあるカフェバーのような店へ移動した。
友人とわたしはそもそも学生時代に表参道のフロールという店でシャンペンを飲み続けていたというシャンペン仲間なので、今回も是非とも一緒にと思っていたのだ。
そこで連れて行ったこの店。はっきり言って料理は全然勧められないが、ワインやチーズの品揃えだけは自慢できる。
それだけに友人と連れ立って注文したのがミモレットというオレンジ色のチーズとガトーショコラ、そしてシャンペンだ。
シャンペンを片手にフロール話に明け暮れるのは楽しかった。思わずつまみに伸びる手も進んで、おかわりなどしてしまったほどだ。しかも、シャンペンもグラスでは飽き足らなくなり、ボトルを頼んでしまった。それでも全然飲み足りないような感じだった。なんだか、浮かれていたようだ。

その夜、友人はうちに泊まりに来たので、家についてからも犬と遊んでくれたり、一緒にテレビを観たりして満喫した。
大体、うちの犬はラブラドールなのでまったく人見知りをしない性質なのだが、彼女に対しては初対面なのにも関わらず、すぐに胸襟を開いていたのがおかしかった。
なにしろ、ソファに座る彼女の膝に頭を乗せて寝転んでいたほどだ。一体だれの犬なのか、という感じがしたほどである。

そんな風にして、友人の仙台出張の夜は暮れた。
翌日、友人はまだ仕事を残していたので、朝、駅まで車で送り、そこで別れた。
土産にする仙台銘菓を二人で物色するため、次々試食したりするのも楽しかった。因みに萩の月というお菓子は地元の人はあまり好きじゃないと思います。