どこかの雑誌で野口強とフミヤがカレー屋について話している対談が載っていて、そのあまりに魅力的な組み合わせについつい引き込まれてカレー話を本屋で立ち読みしてまったのだが、それからしばらくして実際にそのカレー屋に行ってみた。
この店は小さな入り口をくぐるとすぐに奥まで見通せるほどの、ほんとうにこじんまりとしたスペースしかなかったが、壁が真っ黒に塗られているところや、トイレへの通路の手前にかかっている別珍の緞帳とでも呼びたくなるようなカーテンや、セミ・オープンキッチンを覗ける入り口の透明なガラスの感じが好ましくて、店構えからしてすっかり気にいってしまった。
それで問題のカレーはというと、メニューに載っているカレーの種類自体はそれほど多くない。確か、ビーフ、きのこ、とかそんなだ。チキンはなかった。
その代わりといってはなんだが、トッピングが山のようにある。アーモンドスライスとかチーズ、味つけ卵、マヨネーズ卵などなど。
カレーの辛さも三段階くらいの中から自分で選ぶことが出来るので、カスタマイズが楽しい。
因みにわたしが食べたのは、きのこカレーで、辛さは「辛い」(確か「普通」「辛い」「激辛」がある)、それに味つき卵をつけた。連れはビーフカレーの「普通」程度の辛さだ。
このところ、食べるカレーといえば決まってインドカレーかタイカレーと決まっていたので、この店のヨーロッパ風のカレーは新鮮だった。味もものすごく美味しい。ライスにはフライド・ガーリックが撒き散らしてあって、それがカレーとごはんと一緒に口の中に入ってくると、揚げたことによって控えめになった大蒜の風味が口全体に広がるのだ。
カレーの脇に添えられた味付け卵も美味しかった。わたしはそもそもゆで卵というものがだいすきなのだが、これはわたしの注文した辛目のカレーにぴったりで、卵と一緒に食べると味が程よく柔らかくなるのが素敵だった。
この食体験は殆ど陶然とするものだった。って、ちょっと大げさかな。
カレーと一緒に頼んだ白ワインもグラスなのに結構美味しかった。ガベルネ・ソービニヨンのワインで、口当たりはあくまで軽くて辛目だ。食事の前に飲んでもカレーと一緒に飲んでもよかった。フランスとかイタリアワインではなかったような気がするけど、詳しいことは失念。
しかし、あまりに美味しいカレーにめぐり合ったので、帰り際お金を払って店を出るときに、キッチンにいたオーナー?の人に「美味しかったです」と一言付け加えると、それまでむっつりした顔で調理していたのが、顔全体に笑顔が広がったのがものすごく良かった。ああ、また行かなきゃと思わせられる後味とでもいうのか。
とにかく、野口とフミヤのお蔭で美味いカレー屋を知ることが出来てよかった。麻布十番駅を出てすぐの立地も便利なので、通ってしまいそうだ。

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