21g ★★★★★

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、
ショーン・ペンナオミ・ワッツ、ベニシオ・デルトロ出演。

物語が始めから終わりへと時間軸の通り進んでいくわけではなく、話が前後に飛ぶ作りになっているので、複雑なようだけど、実はそうでもない。例えば「メメント」なんかに比べると格段に話の筋は追いやすいし、わかりやすい。
でも途中からちょっと描写が荒くなるような気がする。それはもしかしたら、登場人物たちの精神状態を反映していて、錯乱状態に起こりがちな記憶の欠如を表しているのかもしれないし、ちょっとした説明不足なところも、そう考えると納得行くかなあ。
とはいえ、全体としてはとてもよい映画だったと思う。キャストに素晴らしい俳優陣を揃えて、しかも監督が「アモーレス・ペロス」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥとくれば、もうこれは見るしかないとしか言いようがないのだけれど、実際に映画を観ても、その期待は裏切られなかったなあ。
三人がそれぞれの地獄を抱えて生きていながらも(デルトロが神父に向かって自分の頭を指しながら「地獄はここにあるんだ」と言う場面が象徴的だなあ)、生命の輪は途絶えることなく回っていくというのが感動的だ。勿論、そこには暫時的な断絶というものがあるにしても。

しかし、見れば見るほど好みなベニシオ・デルトロ。今回は16歳の頃から刑務所に入ったり出たりを繰り返し、2年前から狂信的な(と言えるんじゃないかな)キリスト教信徒になりながら、神に裏切られた男という役を演じているのだが、もう、あのフェロモンにメロメロ。
なにがすきって、あのちょっと猟奇的な残酷さと高い知性の両方を備えた目にやられてしまう。本人はごく物静かで、ほんとうにインテリジェントな人なんですけどね、インタビューとかを見る限り。
やっぱり男は色気と胸板だなあ。