ハリー・ポッター アズカバンの囚人 ★★★☆☆

Ura2004-07-09


今回から監督が変わり、暗黒魔法の先生ルーピンにデイヴィッド・シューリス、占いの先生にエマ・トンプソン、そしてシリウス・ブラック役にゲイリー・オールドマンキャティングされたので、むちゃくちゃ楽しみにしていたのだが、正直な感想としては長いということかなあ。
この長さと言うのは要するに物理的な時間のことではなく、映画を観ている間に感じる長さのことで、冗長さと言ってもいい。原作を重んじれば重んじるほど映画が長くなることはあるいは仕方のないことなのかもしれないが、さすが「天国の入り口、終わりの楽園」と言う青春ロード・ムービーを撮ったアルフォンソ・キュアロンの作品だけあって?不必要なエピソードに時間を割き、必要であるはずの説明は省いているような印象を受けた。

例えば、ハリーが動物学で学んだバックビークという動物に初めて触り、更にその背に乗って空を飛ぶ場面。
この動物は後に重要な役割を果たすので、初めての出会いをじっくり描きたいのは分かるが、空を駆け巡る時間にあそこまで時間を割く必要はあるのだろうか。飛んでる途中でタイタニックばりに手を放して見せちゃうところとか。
針小棒大という感じで全てをさらっていくわけにはいかないが、なんとなく青春映画として見せる場面が至るところでチラチラしていて、肝心のディメンターやシリウスの説明が疎かになっていると思う。それこそが今回の作品では核をなす部分なのに。そのお蔭で、ゲイリー・オールドマン演じるシリウスはともかく、ディメンターの恐ろしさはあんまり伝わってこなかったのが残念。そしてディメンターのルックスがなんとなく「ロード・オブ・ザ・リングス」の黒い軍団に似てたこともガッカリだった。
そして最も悔やまれるのは、アズカバンというのがどんなに恐ろしい場所なのかということが端折られていたことだ。
それがしっかり描写されてこそ、ディメンターとシリウスの関係性もしっかりし、更に次の作品に繋がっていくところだったので、これはもう片手落ちというしかないのじゃないか。

ところで、ゲイリー・オールドマン演じるシリウス・ブラック。
彼がシリウスをやるなんてと、随分前から楽しみにしていたのだが、初めて登場する場面では「レオン」の刑事ばりのヒステリーを起こして見せてくれるなど、短い時間なのにすっかり満喫させてくれた。二年の間、まったく映画に出演していない割には、相変わらず素晴らしい演技力と存在感。
かねてから危険な脱獄囚と聞かされていたシリウスとハリーの邂逅はそんなわけで素晴らしかったが、ハリーが自分とシリウスを助けるために向こう岸から強力な魔法を使う根拠はやや薄弱のように思う。

細かい部分をあげつらうとキリがないが、全体としては結構楽しめる映画に仕上がっているのじゃないかと思う。
とはいえ、これもまた一作目・二作目と一緒なのだが、「原作を読んでいれば」という括弧つきという条件の上なのだが。
つまるところ、ハリー・ポッターシリーズは、監督が変わろうとも、同じ問題点を抱えているように思える。この先、原作がどんどん長くなっているのを考えると、映画は一体どうなってしまうのか、と思ってしまうが、多分製作側はなんとかするんでしょうね。「キル・ビル」みたいに半分ずつ見せてみるとか。
とはいえ、ビデオで見るにしろ映画館に行くにしろ、このシリーズは最後まで見てしまうのだろうと思う。特にシリウス役にゲイリー・オールドマンがキャスティングされた今、やめろと言われてもやめられるわけもなく。