下妻物語 ★★★★★

Ura2004-07-12


遅ればせながら観て来た、「下妻物語」。
全身ロリータファッションで固めた深田恭子とヤンキーの土屋アンナという対照的な二人が出ているだけで、なんとなくキワモノ映画的な扱いをされているだろうことは間違いないこの映画。実はかなーり完成度の高い、素敵な映画なのでした。

そもそも、主役ふたりのキャスティングは言うまでもなく、キャラ設定が面白すぎる。
茨城に住んでいるにも関わらずロリータ一色で固めた桃子は一見ふわんとした現実逃避気味の少女のようだが、実はかなり確信犯的なほど自分に正直な性格で、自分の好きな洋服屋で服を買うためなら、どんな嘘でも平気で親につき、金を巻き上げる。
しかもその精神は「ロココ」。
軽薄だろうがみだらだろうが、人生楽しければいいじゃん、という、かなりゆがんだロココ解釈をしっかと実行している。
片やヤンキーのイチゴは、ぱっと見、単なる暴走族にしか見えないが、その実ヤンキーにありがちな尾崎豊好きで、語り始めると熱くなってやまないという、大学生前半男子に見られがちな鬱陶しい性格だ。

このふたりの人生が何の因果か交差する瞬間があり、「友達なんて要らない。人間は生まれてから死ぬ時まで一人なのよ。でも楽しければいいじゃん」と言い切る桃子の心にも人間らしい感情が芽生え、やがて徐々にふたりの友情が深まっていくと言うもの。
一言であらすじを言ってしまうとかなり安っぽいが、実際に見ると、ふたりの友情が深まるまでにはかなり面白いエピソードがぎっしり詰まっている。

例えば、特攻服に刺繍を入れるお金がないイチゴはパチンコ屋で一発当てる事を思いつき、桃子も誘うが、にべなく断られてしまう。それでも「いいじゃん、ダチなんだからよー」と言うイチゴに、道端に停まっていた野菜販売のトラックからキャベツを買ってきてそれをイチゴに手渡し、「ほら、今日からこの人があなたのダチですよ」などとのたまうのだ。
一体なんなんだ、このロリータの格好をした高校生は。面白すぎる。
と、イチゴ以外は全員(つまり観客全員が)思ったに違いない。

そういう面白細部を次々並べていくとキリがないので、いちいち述べないが、あとは推して知るべし。
そういえば、イチゴの涙涙の思い出話も長すぎるというので、桃子が要約する場面があるのだが、そこだけが変なアニメになっている。しかも登場人物のヤンキーたちが全部骸骨顔。
勘違いされると困るのだが、このアニメの場面は、「キル・ビル」に見られたような違和感いっぱいな感じではまったくなく、田舎にある変にゴテゴテした喫茶店でお茶を飲むヤンキーとロリータが話してる場面の次にやって来ても、どういうわけか、あまり奇妙な感じはしない。この辺はやっぱり、アニメ、ロリータ、そしてヤンキーというのが、それぞれ日本が世界に誇る?文化だからなのだろうか。

と、こういう感じで、この映画は最初から最後まで息をつかせない面白さ。
かと言って、キャラ設定から推察されるような安易に奇をてらったような「面白さ」と言うのは、意外だが殆ど無い。不思議な映画だなあ。
多分、この面白さは実際に映画を観た人しか分からないような類のものなのだろうな。
そして、深田恭子はやっぱり、顔のかわいさはともかくとしても、ごつい手足が見え隠れしている辺りが、普通のロリータ少女には見えなかった。でもそれが逆にものすごく良かったのかも。

因みにキャストの良さで言うと、個人的に桃子のだいすきな洋服屋のデザイナーを演じる岡田義徳がものすごくツボだった。
阿部サダヲまで行ってしまうと、逆にハマり過ぎてて安心しきってしまうだろうか。
そして歯のぐちゃぐちゃなパチンコ屋店主、生瀬勝久もよかったなあ。