「ダルタニヤン物語」の種本  

「恋愛血風録―デュマ“ダルタニャン物語”外伝」読了。
この本はアレクサンドル・デュマが「ダルタニヤン物語」を書くきっかけとなった、いわゆる種本である。
もともとのタイトルには「ダルタニヤン本人による」という但し書きがついているが、実際この本を書いたのは、当時既に有名だったダルタニヤン本人ではなく、彼と同時代のGatien de Courtilz de Sandrasである。

ところでこの本はややカサノヴァめいた女性遍歴を重ねるダルタニヤンの姿が中心となって描かれている。
デュマの「三銃士」でダルタニヤンと固い友情の絆を結ぶ、アトス・ポルトス、アラミスの三人もそれゆえ、あまり重要な役割を果たさない。
話はもっぱらダルタニヤンが気に入った、あるいはダルタニヤンを気に入った女性との間に生じた恋愛のことばかりで、それ以外のことはほんの飾りというのに過ぎない。
とは言え、この本がカサノヴァの回想録のように、当時の風俗や文化、政治の様子を知らせる貴重な記録になっていることは間違いないし、デュマをしてあのすばらしい一連の作品を書かせたほど面白い本であることは事実である。
もしもデュマのロマネスクな作品がすきな人なら、きっとこの種本のほうも楽しく読めることだろうと思う。



ダルタニャン物語外伝恋愛血風録

ダルタニャン物語外伝恋愛血風録


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