猫にかまけて  町田康 著


猫にかまけて

猫にかまけて


太宰治以降、日本が誇る?「恥」文化を濃く汲む、クラシックな文体が素敵な町田氏の描く猫との生活。
動物と一緒に暮らしている人になら誰にでもわかるであろう、愉快だが大変な、思い通りには決してならないという格闘の毎日が延々つづられている。
町田氏が飼っている二匹の猫、ココアとゲンゾーに関しての描写も興味深く、読んでいて噴出したくなることしきりだが、ある日道端で拾った子猫ヘッケに関する箇所ではついつい涙が出てしまう。
子猫はすっかり衰弱した状態で町田氏に拾われ、いったんは体重も増え回復したかのように思えたが、ウイルス性の白血病ほか、いろいろな問題が発生し、一年弱ではかなくなってしまうのだ。
わたしがこのヘッケの話を読んで泣かずにおれないのは、単にかつて自分が犬を看取った経験があるかもしれないし、それ以外に理由があるのかもしれないが、動物を一度でも飼ったことのある人なら、この本はとても近しく思えるに違いないと思う。
この「猫にかまけて」を読んでいると、犬もいいけど猫もいいねと思ってしまった。