イブラヒムおじさんとコーランの花たち  ★★★★★

Ura2005-02-22


監督・脚本  フランソワ・デュペイロン
出演 オマー・シャリフ、ピエール・ブーランジェ、イザベル・アジャーニ


すばらしい映画だった。
宗教についての映画でありながら、宗教についての映画ではまったくない。
一見矛盾しているようだが、観ればわかる。
コーランの教えというものが実に自然に当たり前のことのように語られるさまは、多くの映画作家の学ぶべきとろこじゃないだろうかと思う。
宗教という重いテーマをここまでさりげなく見せる事が出来るこの監督は、きっとどんなものでも思い通りに軽やかに料理出来るのではないだろうか。
因みに道端で映画撮影をやっている、50年代風の格好をしたスターがアジャーニだったのには笑った。
まあ、そんなことよりも主役のイブラヒムをオマー・シャリフがやってることにまず驚かされるべきなんだけれど。
何しろ彼は「アラビアのロレンス」のあのオマー・シャリフなのだ。



食料品店(エピスリーね、エピスリー)を営むイブラヒムはコーランから学んだ幸福観と人生観を持っており、それを店にやってくる少年モモ(モーゼ)に少しずつ伝えていく。
一方のモモはというと、思春期真っ只中で、家の前にたむろしている娼婦たちを毎日のように憧れの目で見つめ、ある日覚悟を決めてそのうちの一人を買いに行く。
誕生日に初めて娼婦を買ったことで大人になったかのような気になるモモだったが、それでもまだたったの16歳であることに変わりはなく、男親一人で彼を育ててくれる父親との確執や、女の子とうまく行かないことなどが彼の心を苦しめる。
そして彼をいつも、家を出て行った母親についていった優秀な兄と比べてばかりいた父までもが、彼を捨てて家を出て行ってしまうのだ。