レベッカ・ブラウンほか

家庭の医学　　レベッカ・ブラウン著

家庭の医学

本書を読んで思った。
レベッカ・ブラウンの真骨頂は、やっぱりこの介護を扱った小説だよなと。
小説家がかつて実際にエイズ患者のホスピスヘルパーをやっていたことは有名だが、そのことがすべてを説明するだろうなどとは露ほども思っていない。
しかし、これまで読んだ著者の作品を鑑みると、彼女の作品で優れているのはやはり本書と「体の贈り物」なのだ。
特に本書は母親の死という大きな出来事を扱いつつも、それがまったくセンチメンタリズムに傾くことなく、冷静な観察眼をもって描かれている。
癌を抱えた母親の発症から死、ついては火葬までを再現するのは、要するに母親の死をもう一度「生きる」ということだ。それはブラウンにとってどれほど辛いことであったろう。
しかし、彼女はその残酷な痛みに屈することなく、それどころか、母親の死に過剰におもねることなく、見事な小説を完成させている。
確か「体の贈り物」についても書いたような気がするが、改めて言いたい。
この本は「介護小説」などという安易な呼び名などつけられるべきではないし、そんな呼び名でくくられるほど単純ではない。
この本の素晴らしさというのは、実際に読んだ人だけが触れることの出来る、いわば恩寵のようなものなのだ。

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