村上龍ほか
「半島を出よ(上)」・ 「半島を出よ(下)」 村上龍 著
村上龍の本は、ここ数年まったくフォローしていなかったのだが、山田詠美がどっかの対談で本作を誉めていたので、なんとなく読む気になって手に取ったのだが、とても面白くて、一気に読んでしまった。嬉しい驚きだった。
本作は、ドルが暴落してしまい、アメリカが「世界の警察官」たることをやめてしまった近未来を舞台にしている。
ドルが暴落したことで連鎖的に円も大暴落し、結果日本国内ではインフレが起こる。それ以外にも失業率が10%まで上がり、都市部では100万単位のホームレスで溢れかえる。
経済力が衰退した日本は、アメリカの後ろ盾も失ってしまった今、世界でなんの発言力も持てずにいるという状況に陥ってしまうのだが、そこに北朝鮮の特別部隊が福岡侵略にやってくる。
この作品が面白いのは、物語のまわりを囲むようにしてたくさんの人物の視点から描かれているところだ。
最初はあまりにも人物が多すぎて、これじゃあ物語を効果的に語れないのでは、などと思ったが、読み終わってみるとそうでもなかった。
最後が安易なハッピー・エンディングになってないのも好ましかった。
それにしても、こういう作品を読んでいると、日本の危機管理の甘さに恐ろしくなってしまう。
その上、この本を読んだタイミングも最悪だった。
総選挙で自民党が圧勝した直後に読み始めるなんて、我ながら間が悪いなあ。
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