「しあわせの力

父クリスは骨密度を測る機械のセールスをしていたが、ある日出会った株仲買人がいかにも幸福にあふれた顔をしているのを見るにつけ、自分もそうなりたいと願い始める。
現在のぎりぎりの生活に堪えられずに妻は家を出て行くが、クリスは困窮の生活から脱するために株仲買人になるためのインターンシップに申請し、見事合格。
しかし、このインターンをしている六ヶ月の間はまったくの無給。
インターンシップで仕事を学びながら、相変わらず子供を連れて機械を売り歩いたり、家を追い出されたりと、何度も困難に直面する。


いかにも世間受けしそうな「泣ける映画」なのにも関わらず、あざといところが透けて見えないのがよかった。
それは多分、ウィル・スミスに負うところが多いのだろうなと想像する。
彼が貧困という現実の中で真摯な姿勢を貫くからこそ、映画全体が嘘くさいところの少ない作品になったのじゃないかな。
ちなみにいちばん良かったのは、確か駐車禁止の罰金をまったく払わないせいで逮捕され、一晩留置所ですごすはめになったときにした、宙を見つめるどんよりした目つき。
それを見たときは、これはウィル・スミスじゃないよ、と真剣に思った。

それと、子供がいかにもこまっしゃくれた演技をしないのもすごく良かった。
いわゆる「天才子役」と呼ばれる子供の俳優は、いかにも「天才子役」的な過度な演技をするので、見ていて辟易するのが常なのだが、この映画に出てくる子供は普通でよかった。
父親の仕事に一日中つき合わせられて疲れているのに、帰ってみればモーテルの部屋から荷物が出されていて部屋に入ることが出来なければそりゃ、普通なら「もう疲れたよーー。眠いよーー」と駄々をこねて騒ぐことだろう。
そりゃそうだ。
そういう普通の演出が良かった。