キンキーブーツ

Ura2007-03-01


三代続いた田舎の靴工場。
父親がある日急逝したことにより、仕事を継がざるを得なくなったチャーリーは、父が亡くなって初めて、工場が倒産寸前の状況にあることを知る。
なんとか工場と従業員を救おうと、ロンドンまで出掛けて行って奔走するものの、どうにもならずに、15人もの従業員をクビにする羽目になるが、それでも事業は好転しそうにない。
いろいろ頭をひねる間、ひょんなことで出会ったドラッグクイーン、ローラの助けを借りて、ドラッグクイーン向けのブーツや靴を作ることを思いつく。

    • -

こういう映画を作らせると、イギリスという国はほんとうにうまい。
物語自体は、保守的な紳士靴を作っていたシューメイカーが、いきなりドラッグクイーン向けの靴を作り始めることにするということを除けば、比較的ありきたりなのだが、演出と脚本の妙で、終始厭きさせない仕上がりとなっている。


そもそも、この映画の魅力とは、ローラとチャーリーという人間の好対照なのじゃないだろうか。
田舎出で優柔不断なチャーリーは、工場の危機というクライシスを目前に、突如として奮起する。
一方のローラは、セックスアピールたっぷりのドラッグクイーン。
彼女は自信と魅力に溢れたステージパフォーマンスを見せる一方、ドラッグクイーンの格好をしていないときは、挨拶一つするのもためらうようなシャイな男性?なのだ。

この二人がコンビを組んで、田舎の保守的な従業員たちを巻き込んで、ドラッグクイーン向けの靴を次々と作っている様は殆ど痛快である。
勿論、物事はそう簡単には運ばない。
チャーリーの婚約者は、不自由ない結婚生活を求めて、チャーリーに工場を売り払えと迫り、保守的な従業員たちは、オカマ相手の靴など作れるかとそっぽを向く。
それでもローラとチャーリーはお互いの弱さを許しあいながら、ミラノのショーへ出品するのを目指して奮闘する。


ラストのミラノでのショーはまさに圧巻。
ドラッグクイーンたちが、工場で作ったばかりのブーツやらハイヒールを履き、踊りまくるのである。
しかも、ローラはこの日のために作ったらしい?「ブーツの歌」を歌いまくる。
曰く、「ブーツは歩くためにあるのよ。あなたを踏みつけるのはまたあとで」云々。
いやー、最後にこんな大きなカタルシスがやってくる映画というのは、ほんとうに観ていて心地よい。
最初から最後まで文句なしに楽しめる作品だった。



それにしても、チャーリーがいちばん最初にローラのための試作品ブーツを作る場面。
出来上がったバーガンディ(臙脂。でもあれは臙脂っていうか、ワイン色?か?)のロングブーツを見て、怒りまくり、「バーガンディ・・・バーガンディ!バーガンディなんか履けるわけがない!レッドよ!セックスのレッド!レッドはセックスの色よ!」とわめき散らす姿が最高だった。
あまりにもそのインパクトが強かったので、今日靴屋をぶらぶら見ていたときにバーガンディの靴を見るなり、「セックスの赤じゃないから駄目だ」と頭の中で声がした。
そのときは我ながらあまりにも面白すぎて、吹き出しそうになってしまったほどだ。
いやあ、強烈。


監督 : ジュリアン・ジャロルド
脚本 : ティム・ファース 、 ジェフ・ディーン
出演 : ジョエル・エドガートンキウェテル・イジョフォー 、 サラ=ジェーン・ボッツ 、 ユアンフーパ