バベル

「バベル」を観てきた。
ほんとうに素晴らしい映画。
「バベル」というタイトルが示す通り、ディスコミュニケーションがテーマだが、
問題は言葉じゃないという視点。
言葉が通じないもの同士は、そもそも言葉に不自由があると知っているから、コミュニケーションをとる上で努力をする。
その一方で、同じ言葉を話すもの同士は、コミュニケーションが取れて当然だと思っているふしがあって、お互いをわかりあうための努力をおざなりにする。
問題は言葉じゃなくて、共通言語なんだ。
つまり、両者で共同幻想を共有できているかということ。

警察には警察の言葉があり、
テロリストにはテロリストの言葉があるように、
恋人たちには恋人たちの言葉が
そして子供には子供の言葉がある。
それらが通じるのは決して、「言語」のためじゃない。
両者が同じ基盤に立って、言葉を発しているかということだ。

それにしても、菊池凛子はよかった。
耳が聞こえない高校生の役なのだけど、ティーネイジャーの欲求不満に加えて、
耳が聞こえないことによって増幅しているディスコミュニケーションへの苛立ちと不満を演じきっていた。
裸になったり、ノーパンになったりするのは、はっきり言っておまけ。
すごいのは、気に入った男の子が自分の友達とチューしているのを見て自暴自棄になるのだが
鬱憤を晴らす相手に好みの刑事を選んだり、
診療中の歯医者の顔をなめたりするところ。
でもそれだけ愛に真剣というか、愛を得ようともがいているのがよくわかった。

ちなみに映画上映中、映画館の中がいように暑かったのだが、
あれは砂漠の息苦しい熱気を再現しようとしての意図的な暑さ?
それとも単に映画館側の管理体制が駄目なだけなのか、
気になるところだ。


追記:
あと今思い出したけど、菊池凛子演じる高校生は耳が聞こえないので、よく筆談するのだが、
その筆談や手紙の内容を見せないのはすごくよかった。
手紙を見せちゃったり、ナレーションつきで読んじゃったりしたら、きっとものすごく白けただろう。
アレハンドロ、ナイス
って思った。