スウィーニー・トッド

ティム・バートンの最新作「スウィーニー・トッド」を観てきた。
なんともまあ、陰惨でロマンティックな映画だが、終わり方が壮絶で暗喩に満ちている。
ほんとうにすてきな作品!


それにしても、
妻と娘、そして幸福な人生を奪った男に復讐をするために舞い戻った男が、
生き別れになった娘をいとも簡単に捨てる様子と言ったら。

まだ見ぬ成長した娘に向って
「さようなら、わが娘。美しくあるのならば、金色の髪でなくともよい」
と歌う様子は、
まるで電気仕掛けのフランケンスタインのようだ。


愛と幸福を成功をつかもうと躍起になっているミセス・ラヴェットが夢を語るのに引き換え、
彼の目はいつも虚ろで曇っている。
ミセス・ラヴェットの夢想の中でも男は
「きみのすきにするがいいよ」
と、死人の返事。
唯一その目に光が宿るのは、
復讐を誓った男を殺すこと、
あるいは
そのための画策を練るときのみ。


そういう男がこのような最期を迎えるのは、
まあ当然といえば当然。
どうせ端から死んでいたのだ。


それにしても、
ジョニー・デップの白塗りの顔は
「シザー・ハンズ」を彷彿とさせるが、
その頃よりもはるかに表情に富んだ「死人」っぷりだった。
強欲でけなげなヘレナ・ボナム・カーターもよかった。