「王妃の紋章」

壮大なメロドラマ


王妃の紋章」を観て来た。
それはそれは絢爛豪華
あっちを見てもこっちを見ても黄金といった感じの映画だが、
中身はなんのことはない、メロドラマだった。
メロドラマ、しかし荘厳な。


愛憎に満ち満ちた人間関係をこれでもかと盛り込み、
無駄なところはなにもないが、
ポイントポイントでしっかりためて魅せる。
その辺もメロドラマたるゆえんか。


とはいっても、
出演するのは美貌のコン・リーと、
アジアの美丈夫代表とされるチョウ・ユンファ

特に
愛息を失ったことで怒りに我を忘れ、
怒髪衝天の様相で仁王立ちするユンファはまさに雷神。
素手で相手と渡り合い、
それだけでなく、黄金のベルトをしゅるっと抜き去ると、
怒りに任せてベルトで相手の背中を打ち据えるその姿!
さすが、アメリカでも認められたアジア人だけあるよ、と
一人ごちてしまったほどだ。


それにしても、
クライマックスの戦争の場面のすさまじいこと。
一方がもう一方を広場で囲い込んで殺していくさまは、まさに殺戮。
さすが肉食なだけあるよ、すごいよ大陸の人は、
島国出身の淡白なわたしたちは、
さすがにここまでは出来ないよな、と
変なところで感心してしまった。

そして、
殺戮のあとに
どこからともなく中国人がわらわら出てきて、
血染めのカーペットやら菊やらを淡々と掃除していく様がまたすごい。
殺し合いの場面そのものよりも、ある意味壮絶なものを見ているような。


権力者という存在について。
つまり、王であるところのチョウ・ユンファだが、
おそらくは何千という単位の人間同士の殺し合ったその直後に、
謀反を起こした妻と息子が血まみれになっているのを目の当たりにしながら、
眉一つ動かさず、平気な顔で食事をする、その精神力。
果たして「狂っている」としか言いようがないような人間ではあるが、
世界はこういう権力者の決断によって方向を決定するのだなと実感してしまった。
人間としては完全に破綻していることは間違いないが、
鉄の精神力を持たねば権力をねじ伏せられないのも事実だ。
おそらくこの王は、
家族が全員死滅したそのあとで、
なにもなかったような涼しい顔であたらしい王妃を娶り、
そしてあたらしく世継ぎを生ませるのだろう。