父親が「読めば?」という感じで数日前に手渡してきた「同時代を生きて」という本読了。
瀬戸内寂聴ドナルド・キーン鶴見俊輔の対談本で、タイトルの通り、彼らの同時代について三人で延々と話すという趣旨の本である。
わたしが最も面白く読んだのは大体三島や川端のくだりで、鶴見俊輔の友人だかが「三島さんがノーベル賞をとっていたら、三島さんも川端さんも長生きされたでしょうに」と言ってた、という箇所に胸がつまる思いだった。
わたしは当然だが、その頃は全然リアルタイムで経験していないのだが、三島のことなら人並み以上に知っているので、その当時の三島の心情がよくわかる。この人は賞やなんかを重要視、あるいは受賞に付随する諸々のものに大きな価値を見出している人なので、確実と言われていたノーベル賞がよりによって自分の師である川端に行ったときには身を切られる思いだったに違いないのだ。しかしそれでも、彼は誰よりも先にお祝いの言葉を伝えるために師に電話をした。
一方の川端は、おそらくその頃はもう全然小説が書けなくなっていた。彼が書けなくなったのがノーベル賞より前なのか後なのかは知らないが、受賞してしまったことが小説家のプレッシャーになってしまったことは間違いがなく、そのあとはもう確実に何も書けなくなってしまったのだ。そして勿論、小説家にとって書けないということは、殆ど死を意味している。

それ以外では、鶴見俊輔の硯学に驚いた。そしてドナルド・キーンのすすめるヘンリー・ジェイムズを近いうちにゆっくり読み直そうと思った。
そして、同氏著の「明治天皇」も面白そう。