久しぶりにリブロまで行ったので、観念して?本を買ってみた。
吉本隆明・出口裕行著「都市とエロス」、川上弘美著「物語が、始まる」

「物語が、始まる」のほうは相変わらず川上弘美らしく、寓話めいた雰囲気いっぱいの、摩訶不思議な短編集だった。
いちばん最初に入っていて、本のタイトルにもなっている「物語が、始まる」は、ある日女性が男の雛形を拾う話で、当初は普通の人間の恋人がいるにも関わらず、段々と雛形の三郎とアタッチしていくという物語。
人間が人形に恋をする話と言うのは昔から沢山あって、要するに自己愛を人形に投射しているというのが大方の解釈なのかなあ。
人形というのはかつては「ひとがた」と呼ばれていただけあって、文字通り「人の形をしたもの」なのだから、それが意識を持ったり自分の意思で動いたり喋ったりしてもいけないわけはあるまい、と言うような気もするのだけれど。

まあ、とにかく、そういう人形のような人間のような雛形と深くコミットしてしまった女性は、やがて人間の恋人と別れ、雛形と一対一で向き合うことになるのだけれど、そこはやはり人形と人間、依然として大きな障壁がある。
考えようによってはロマンティックだけれど、限りなく残酷でせつないお話だった。

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河合隼雄谷川俊太郎の「魂にメスはいらない」読了。
ユング派とユングについての話を河合が谷川に解説するような形で成立している対談集。
谷川俊太郎が会話の合間に挟む質問やコメントがいちいち気が利いているのが嬉しい。そして、巻末には谷川の詩に対する河合による分析なんかもあったりするのも得した気分だ。

ユングは結構わかりにくいので、本人の著作はついつい敬遠してしまいがちなのだけれど、これはほんとうにわかりやすい。さすが、河合隼雄自身がユング派なだけあるよなあ。って当たり前?

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