アフターダーク追記2

それと、忘れないうちに記しておくが、友人との間で、「アフターダーク」は同小説家の「スプートニクの恋人」似ているという意見が一致した。
わたしにとっても友人にとっても「スプートニク」というのはいわゆる過渡期的な作品(つまり「ねじまき鳥」から「カフカ」に至る間の)なのだが、この「アフターダーク」もまたそういう要素を多分に含んでいるように思われる。
そういう風に考えてこそ、物語のナレーターを務める「視点」の理由もつこうというものだし、「エリ」が異様に「スプートニク」のミウに似ていることも納得出来ようというものだ。
勿論、そこには相違点もある。
それは「救済」の問題で、「スプートニク」ではすみれを探し出すこともミウの心の闇をどうすることも出来ない傍観者だった「僕」に比べて、「アフターダーク」ではマリが姉をおそらくは救済しえたと言う点である。


村上春樹のこの新作について色々考えているとしかし、面白い感想が続々出てくるなあ。
その辺の底の浅い小説とは違って、面白い、面白くないでは割り切れないことは当たり前だが、一作毎にあたらしいものを提示し続けるところが、この小説家の素晴らしいところだと思う。