「アムリタ(上)(下)」、「ハネムーン」 吉本ばなな


最近夜寝付きが悪いので、寝しなの読書時間がどんどん長くなっていき、昨日なんて二冊も本を読んでしまった。
しかも、どちらも吉本ばなな改め、よしもとばななの作品。


「アムリタ」は、吉本ばなな小説で一貫して見られるテーマのひとつである「オカルト」がこれでもかというくらい前面に押し出された作品だ。
彼女の作品で身近な家族や恋人がばたばた死んでいくのは珍しくないが、「アムリタ」の主人公の家族環境はというと、まず父親と死に別れ、母親が再婚して離婚し、妹が自殺し、そして自分は頭を打って記憶を失ってしまい、弟は超能力少年という、すさまじい設定だ。
でもどんなに奇妙奇天烈な設定だろうと、ばななの小説がおかしいくらいさらっとしていて自然に読み通すことが出来るのは、主題が「オカルト」ではあっても、ほんとうに小説家が書こうとしているのは、日常における普遍的な小さな事柄だからだ。
それはたとえば、恋人が死んでしまって落ち込む日々がどんなに続いても、ある日、雪が降っているのをふと見て綺麗だなあと感動してしまったり、友達や家族とのぶっきらぼうながらも愛情に満ちた会話だったり、ペットの犬を散歩させているときの楽しさだったりする。
そういう、世界の誰でもが絶対に体験せずには生きていけないような事柄こそが、ばなな小説の真骨頂なのだと思うし、だからこそ、彼女の作品は日本を離れた遠い国々でも愛読されているのだろうと思う。


ちなみに「ハネムーン」でもやはり家族の喪失ということが描かれているのだが、人の心は死んだままではいられないのだよ、ということが強く訴えられている。
それと、犬を飼うと楽しいよ、っていうこととか。