レベッカ・ブラウン

Ura2004-11-05



勝手にレベッカ・ブラウン来日記念ということで、かねてより気になっていたレベッカ・ブラウンの本を読んでみた。
たまたま本屋に行ったときに原書が見当たらなかったので、柴田元幸の翻訳にての「体の贈り物」。


これはエイズ患者をお世話する「私」の物語だが、いわゆるお涙頂戴的な安っぽいセンチメンタリズムとも偽善ともまったく縁のない、不思議に感動的な短編集だ。
短編の一つ一つに「〜の贈り物」というタイトルがついている。例えば「汗の贈り物」などというように。
そしてそのそれぞれが例外なく、エイズ患者と「私」の物語なのだ。
患者はある時にはまだ自分で自分の世話をしようと努めていたり、ある時には末期でベッドでただ横たわるだけだが、全員に共通しているのは、彼らが急速に死に向かって行ってるということである。
その死に向かう人々を、あるいは「死」そのものを「私」は見つめ続ける。何度経験しても、自分がケアしている患者の死は強大で絶望的だ。
でも「私」に出来ることは、この瞬間を彼らと分け合うことだけ。逃げないこと。向き合うことなのだ。


死に向かっていくエイズ患者とメディカル・ヘルパーの物語と言ってしまうと、この物語の良さや美しさはおそらくまったく伝わらないことになるだろう。
そのことは、翻訳している柴田元幸氏も言っている通りである。
この本のすばらしさを味わうには、自分で読んでみるほかはないのだ。

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