優雅な生活が最高の復讐である

Ura2004-11-10


カルヴィン・トムキンズ著「優雅な生活が最高の復讐である」読了。
フィッツジェラルドピカソに愛され、生活を芸術の域にまで高めたジェラルド・マーフィとセーラ・マーフィ夫妻。
フィッツジェラルドは憧れのあまり、彼らを「夜はやさし」のモデルにし、ピカソはセーラについて「彼女といると僕は嬉しくなるんだ」と賞賛した。
彼らの優雅で趣味の良い生活や優しくて寛容な人柄は多くの人に愛されたが、実は彼らの結婚生活というのは、傍にそう見えるほど幸せなことばかりだったわけではない。
三人の子供の二人までを病気で失い、画家であったジェラルドはそれを機に筆を折ってしまう。
そして著者によれば、ジェラルドは筆を折って以来、永遠にしあわせにはなれなかったのだ。


他人の生活というのは一見したところではわからないが、少なくともマーフィー夫妻のあたらしいものを追いかけるエネルギーやオープンな精神というのは、いつの時代でも学ぶところのあるもののように思う。
時間が山ほどあるのに、映画も本を読まずに怠惰に暮らすわたしにとっては、やや耳の痛い(目が?)本だった。
そして人々を受け入れる寛容さと勇気。
フィッツジェラルドの嫉妬や屈折した憧れを受け入れ続けた夫婦はほんとうに開かれた心の持ち主だったんだなあと思う。
そしてジェラルドの絵が死後、世の中に広く認められたことも、家族にとっては救いになったのではないだろうか。
芸術家といえども、生活を見下してはならないという教訓。
でも考えてみると、この教訓はデュマの昔から言われてきているのだった。