眼は開けたまま

Ura2004-11-18



歯医者の治療の時はいつも目を開けたままにしておく。
治療の腕はピカ一だが、首のリンパ腺のところを不必要に強く抑えたり、くちびるを変な形に押し付けたまま治療をすすめるという、かなり乱暴なうちのホームドクターは、しばしばわたしのまぶたを変な風に押さえたまま治療したりして、虫歯よりも押さえつけられているくちびるだのリンパ腺のほうが痛かったりするわけだが、そんなときでもわたしは決して目を閉じないことにしている。
ほんとうは、レーザー治療のときだって目を開けたままでいたいくらいだ。
なぜなら、怖いから。
自分の預かり知らぬところでなにかが行われている、しかもその「なにか」が自分に向かって行われているなんて、恐ろしすぎる。
ホラー映画にしたって、ほんとうに怖い映画というのは大体、映画の終了30分前くらいまでは何が起こっているのか全くわからないものなのだ。
コッポラが製作したというのでつい魔がさして観に行ってしまった、相当な馬鹿ホラー映画(タイトル失念)にしたってそうだ。
あのなにがなんだかわからない人食い化け物が姿を現すまではほんとうに怖かった。
でもそいつが出てきた途端、どこか着ぐるみショーじみた滑稽さが出てしまっていたではないか。

で、何が言いたいのかと言うと、要するに、歯医者の治療は死ぬほど嫌だが、目を閉じたまま治療を受けるのはもっと嫌ということだ。
もしもわたしがギロチン刑がまだ存在していた頃の罪人だったとしたら、ギロチン刑ほど嫌なものはなかったろうと本気で思う。
なにしろ、あれこそはわけのわからないうちに最悪なことが起きてしまうという最たる例なので、しかも天から降って来る刃があまりに鋭いため、罪人はしばしば自分が死んだことに気づかないというではないか。ああ、いやだ、いやだ。


って、そこまで妄想を膨らませる必要はなんらないわけなのですが、歯医者で治療を受けている間に暇だったので、ついつい要らぬ考えを発展させてみたわけです。

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