"The Red Notebook" by Paul Auster

Ura2005-01-23



オースターによるほんとうにあった話ばかりを集めた本。
彼の小説には共時性、つまりシンクロニシティが数多く起こるが、どうやらそれは小説だけに限ったことではなく、彼の周囲では頻繁に起こっているらしい。


例えば、彼の友人の話。
彼女が一人目の子供を妊娠していたある日、もうそろそろ生まれてもおかしくないという頃なのだが、自宅のリビングルームでふとテレビをつけた。
するとオードリー・ヘップバーン主演の「戦争と平和」がやっていたので、それを観ることにした。
彼女はしばらく映画に夢中になっていたら、途中で陣痛が起こったので、そのままタクシーだか救急車だかで病院へ向かい、結局その映画のエンディングは知らず終いになってしまった。
その後、数年たってから、彼女は二人目の子供を妊娠した。
臨月のある日、またもや彼女は一人、リビングルームでテレビをつけると、なんと一人目を妊娠していた時のように「戦争と平和」をやっているではないか。
しかも前回彼女が病院に運ばれた時の場面である。
当然彼女は映画を観始め、今回は最後まで観ることが出来た。
そして映画が終わった頃に破水し、病院に向かうことになった。
こうして彼女は「戦争と平和」を最初から最後まで観ることが出来た。蛇足だが、彼女の出産は一人目の時は恐ろしく難産だったが、二人目の時はこれが同じ出産かと思うほど簡単だったらしい。

このような、にわかには信じがたいような不思議な本当の話が本書には幾つも収められている。
勿論、オースター特有のリズムによって語られているので、話の性質も手伝って、素敵な短編集を読んでいる気分になれる。
シンクロニシティを信じない人もこの本を読んだら信じざるを得ないかも。



The Red Notebook: True Stories (New Directions Paperback)

The Red Notebook: True Stories (New Directions Paperback)