阿修羅ガール


舞城王太郎の「阿修羅ガール」読了。
本作は三島由紀夫賞を受賞したようだが、読んでみたところ、うーん、その身体感覚が全然わからん、というのが正直なところだ。
主人公の頭の中に森があって、そこに恐ろしい生き物がいたり、自分や(頭の中で自分がこしらえた)仲間たちが殺戮を目撃したりするのは、村上春樹の「ハードボイルド・ワンダーランド」を彷彿とさせる。
おそらく、誰もが頭の中に森、あるいは闇を抱えているのだろう。
しかしなんというか、本作に出てくる人物たちの身体感覚がわからないなあ。
おそらく2チャンネルをモデルにしたネット上の巨大掲示板で繰り広げられる発言の交錯が、実際に主人公の住んでいる調布での暴動に発展したり、主人公がその出来事をネットと現実世界とで平行に見ていたり。
しかし、結局のところ、いちばん興味のあることは、当たり前のように、すきな男の子だったり、その子とセックスすることだったりする。


この作家の作品を読んだのは初めてのことだが、多分この舞城という作家は随分と力のある書き手なのだろう。
それは本作を読んでいてよくわかる。
ただ、本作がそれほど優れた本なのかというと、首を傾げざるを得ない。
なんだか、わざと猥雑なものを丁寧にその辺に散らかしてみたという印象を受ける。
とりあえず、この作家については、ほかの作品を読むまで保留。


阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)

    • -