内的体験

佐渡裕シエナウインドオーケストラのツアーを観てきた。
すばらしい演奏!
というよりも、
それは一つの内的体験といったほうがいいかもしれない。


佐渡氏の振るタクトだけでなく、彼の体の揺れ、果てはアイコンタクトまでが、
オーケストラの一人一人までのエネルギーを余すところ無く集め、
それを束ね上げ、ぐんぐんと揺らしていく。
そのエネルギーの揺らぎが磁場のようなものを作り、
演奏を聴いているこちらまで、自分の頭のてっぺんからエネルギーを吊り上げられ、
音楽の一部になっていくような感じだった。


大体わたしは思念というものを頭から追い出すことが出来ないことが多く、
なにをしていても、考えることをやめられないことが殆どなのだが、
この演奏中だけは、場の熱までに昇華していたとしか言いようが無い。


よく素晴らしいパフォーマンスを見るにつけ、
「パワーをもらった」
というような言い方をする人がいるが、
この演奏に関しては、パワーは貰うものではなかった。
貰うのではなく、
その一部に吸い込まれ、吸い込まれた人全員のエネルギーと交じり合い、循環し、
それがその過程で浄化されるという、
音楽というにはあまりにも崇高で気高く、尊い体験だった。


佐渡氏も今日の演奏で普段とは違う高ぶりのようなものを感じたようで、
「今まで8日間の演奏で大体一万人くらいの人が来てくれたんだけど、
ほんと、今日来るべきだったね」
と二回くらい言っていた。
それくらい今日の演奏は特別だったのだと思う。
それは演奏している側も、
聴いている側も同じように感じるエネルギーの充実だった。


ああ、それにしても、
このような素晴らしい体験を今日初めてしたなんて、
今までの時間がほんとうにモッタイナイ。
これから、なるべくたくさんの佐渡さんのコンサートを観にいきたいと思う。


それにしても、
こういうのって、多分中世だったら、
「宗教的体験」
って言っちゃうんだろうな、きっと。